2017年8月6日日曜日

玉頭位取り戦法

玉頭位取り戦法の紹介をしていきます。


玉頭位取り戦法とは

今では目にすることもほぼ無いような戦法ですが、昭和のころはよく指されていたそうです。

どういう戦法かというと、相手の美濃囲いに対して銀立ち矢倉を組み、玉頭から攻めていくことを目指した戦法です。

居飛車の囲いは下図のような構えになります。


▲7五歩と位を取って、矢倉囲いの銀が1マス上がったこの囲いを銀立ち矢倉と呼びます。

基本的に、対振り飛車戦で居飛車側が採用する戦法となります。

美濃囲いは横からの攻めにはとても強いですが、上部からの攻めにはそこまで強くありません。

そこで、飛車を成りこみあって横からの戦いにするのではなく、玉頭から直接攻めてしまおうという趣旨の戦法が玉頭位取り戦法です。


攻め方

玉頭位取り戦法を採用した時の攻め筋を、いくつか見ていこうと思います。

コビン攻め

玉頭位取りを指さなくても、美濃囲いに対してよく見かける攻め筋ですが、角のラインを活かしたコビン攻めがあります。


玉頭位取り戦法では、序盤のうちに元々▲7五歩とすでに位を取ってます。

そのため、桂馬を拾わなくても▲7四歩と、たった1手ですぐに相手陣につっかけることができます。

角のラインさえ安定すれば、▲7三歩成から再度▲7四歩と打って、執拗に7三地点を攻めることができます。

また一段目に龍を成っておけば、△7三銀とこの銀が動いた瞬間に6一の金をボロッと取ることができます。

普通の対抗形の将棋のように横からの攻めだけではなく、縦のからの攻めを組み合わせることができるので、非常に強烈な攻めとなります。


と金攻め

序盤で位を取っておくということは、歩をすぐに突き捨てられるということです。

下図のように7筋だけでなく6筋の位も取っておくことで、▲6五歩△同歩▲6四歩といったような、歩を使った安上がりな攻めをすることができます。


歩で攻め込むことができるので、相手に高い駒を渡すこともありませんし、反撃の心配がありません。

攻めるときにその筋に歩が利くというのは非常に大きいです。


垂れ歩

こちらも歩を使った攻めです。


▲8五歩△同歩▲8四歩として玉頭に拠点を作ってしまいます。

銀や香車を拾うだけで、8三に打ち込んで攻め込むことができます。

玉の横に金銀をたくさん並べた美濃囲いですが、上部からの攻めに備えているのは7ニの銀しかいません。

5筋6筋に配置された金駒の守備を無力化することができる攻めです。


受けの手筋

基本的に矢倉系の囲いというのは、横からの攻めに対して耐久力がありません。

玉頭位取り戦法で使われる銀立ち矢倉も一緒です。

ただ普通の矢倉と違って、玉頭位取り戦法ならではの受け方というのも存在します。


底歩

中盤で6筋の歩を突き捨てておく展開となることも多く、終盤で横から飛車を打たれたときに6筋に歩が利くのがとても心強いです。


守りに歩を打ってしまうと、6筋に歩を打つ攻めはできなくなりますが、この底歩1枚入るだけで相手の攻めをかなり遅らせることができます。


また、底歩ではなくても、自陣に歩を打つ受けというのは非常に相手からするといやなものです。


矢倉は玉の横に金1枚しか置いてないため、△6九銀などと打たれてこの金に手を付けられてしまうと、ほぼ粘りが利きません。

それを、この▲6八歩のような1手だけで見違えるように固くすることができます。

すぐに6筋の歩を突き捨てられる戦法だからこそできる受け方です。


玉が広い

とにかく上部が広いです。


7筋8筋の空中は序盤のうちに自分の領土としてますから、相手としては横から攻めていっても、詰ましきるのに意外と手こずります。


戦法の特徴

ほかにも玉頭位取り戦法の特徴があるので、思いつくだけ書き出してみます。

良いところ

直接相手玉に攻め込んでいけるので、思ったより攻めが早いです。
横から攻めるのと比べて、5筋6筋の金銀が守りに利いてきにくいため、すぐに王手のかかる格好を作ることができます。

居飛車からの玉頭攻めが意外と早いので、中盤で先に飛車を成りこまれて攻められているようでも、歩をつっかけて玉頭戦が始まってしまえば、すぐに紛れます。
見た目以上に形勢が良いことも多く、銀立ち矢倉を組んだ時点で実は模様勝ちしていることが多いです。

そして、あまり見かけることのない戦法なので、対策している振り飛車党が少ないです。
対策を知られていないということは、自分の狙い通りの形が実現しやすいということでもあり、アマ同士の対局では大きなアドバンテージでしょう。

ほかにも、早々に▲7五歩と位を取ってしまうので、振り飛車側の右桂の活用を押さえることができます。
高美濃~銀冠への囲いの進展も許さないため、振り飛車側を手詰まりにさせやすい戦法です。
囲いの進展性がなければ、振り飛車のほうとしても仕掛けていくしかありません。
角道を止めるタイプの振り飛車は、基本的に居飛車に攻めてもらってカウンターで捌く戦法ですから、自分から開戦するのには向いてないわけです。
手詰まりになりたくなければ無理に仕掛けていくしかないので、中途半端な体制から動いた結果、受けきられてしまうということが起きます。


悪いところ

組上がるまでに手数がかかるので、早めに開戦されるとピンチです。
とにかく相手の攻めを遅らせる技術が必要になります。

駒が上ずって隙が生じやすいので、角交換しただけでも気を使います。

隙ができると一瞬で崩れる陣形なので、早指しにはやや不向きなところがあります。



まとめ

ここまで玉頭位取り戦法の紹介をしてきました。

個人的には魅力が詰まっている戦法だと感じています。

特に玉頭戦でごちゃごちゃした展開というのは読む分量も増えますから、将棋の上達という面では非常に指す意味のある戦法なのではないかと思っています。

また玉頭戦は縦の戦いですから、歩を使った手筋や桂香を使う攻め方など、棋譜を見直すだけでも多くのことを学べるのではないかと思います。

しかし、やはり玉が固い囲いが好まれるのが今時の将棋です。
勝率重視で行くなら、玉頭位取り戦法のような薄い囲いではなく、左美濃や穴熊といった固い囲いで戦うのが良いのでしょう。

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