2017年7月30日日曜日

横歩取り△3三桂戦法 ▲5八玉型の端攻め

横歩取り△3三桂戦法


横歩取り△3三桂戦法です。



対策を忘れたころに指されてしまうといった感じで、たまに出くわします。

これは横歩取り後手番で、ひねり飛車を目指した戦法です。
先手が▲3六飛と引けば、後手はひねり飛車模様に組んできます。

また先手が隙を見せようものなら、△4五桂の1手で角と桂馬が働きだし、乱戦となる変化を含んでいます。

久々にこの△3三桂戦法に当たったので、今回の記事は先手番での対策を見ていきます。

△3三桂への先手の対応

△3三桂の局面では、先手としては
①▲3六飛と引いて横利きで歩を守る手
②▲3八金と上がって△2六飛に備える手
③▲8七歩と打って飛車の行き場を問う手
などなどあります。

①▲3六飛

▲3六飛とじっと引く手には、後手も△8四飛と引いて、以降は落ち着いた戦いとなります。

②▲3八金

▲3八金と指すのも1局で、以降は▲3六飛△8四飛と飛車を引きあって、落ち着いた将棋となります。

③▲8七歩

▲8七歩と打てば△7六飛と横歩を取られますが、そこで▲8四飛と回ります。
後手は△8二歩と受けますが、そこから▲2三歩△同金▲2四歩として金を取りに行く指し方となります。
以下△4五桂と跳ねられ、激しい戦いとなります。


▲5八玉型の端攻め

▲3六飛、▲3八金、▲8七歩と見てきましたが、▲5八玉という手も有力とされています。

態度を保留したような手の▲5八玉ですが、この手も飛車を四段目に置いておくことで、後手に△8四飛車と指させないようにしています。

つまり、△3三桂と跳ねたのにひねり飛車にできないようでは、後手として面白くないでしょうと言った手です。

これに対して後手は角の可動域を広げるべく△1四歩と突いてきます。

対して先手も▲1六歩と突き、端攻めを狙っていきます。


飛車が4段目にいるので、次に▲1五歩と仕掛け、△同歩に▲1二歩△同香▲1三歩△同香▲1四歩という順があります。

△6二玉

ここで後手の手として一番多いのは、△6ニ玉と右側に囲う手です。

△6二玉に対しては、端攻めを受けてこなかったので当然▲1五歩と仕掛けていきます。

以下、△同歩▲1二歩△同香▲1三歩と進みます。


この▲1三歩には、△同角と応じます。

△同香として▲1四歩から先手に香車を渡すと、▲8七香があるためです。

△1三同角には▲1五香と走りますが、この瞬間に後手は角を働かせようと暴れてきます。

激しい将棋となります。

△7六飛車

▲1六歩と端攻めを見せた手に対して、△7六飛という手もあるそうです。


おそらくプロで指された棋譜は1局もありませんが、これはこれで有力だと思います。

意味としては、
端攻めで香車を渡したときにあらかじめ▲8七香を防いでること、
横利きで1筋まで通っているので△1六歩として先手の香車の利きを止められること、
などがありそうです。


△6二玉の場合と同様に、▲1五歩からの端攻めを調べていきます。
▲1五歩△2六飛▲2八歩

△2六飛と回って▲2八歩と打たせることで、先手の持ち歩を1枚減らします。

これで▲1二歩△同香▲1三歩△同香▲1四歩と3回叩いて香車を吊り上げる攻め筋は消えました。

▲2八歩と打たせてから、△1五歩と手を戻します。

そして先手は歩が2枚しかないため、▲1三歩とこちらに打つことになります。


△同香には▲1四歩、△同角なら▲1五香です。
放置しても▲1五香と走って次の▲1二歩成を狙います。

しかし直接香取りになっていないため、厳しさは半減しています。

▲1三歩には、後手は△1六歩と伸ばして先手の香車を止めます。
これで端攻めが受かっています。


▲1二歩と直接香取りに打つことができていれば、ここで▲1一歩成として先手の駒得ですが、持ち歩を1枚受けに使わされてしまったため、先手の端攻めを受けきった格好になっています。


ということで端攻めが上手くいかないと分かったので、すぐに▲1五歩の仕掛けはだめです。

▲1五歩と仕掛ける前に、一度▲2四飛と戻っておく手について調べていきます。


すぐに▲1五歩と仕掛ける進行は、△2六飛に▲2八歩と打たされてしまい、持ち歩が2枚になってしまったので、端攻めが上手く行きませんでした。

そこで、先に△2六飛車と回られる手を防いでおき、次に▲1五歩の仕掛けを狙います。

▲2四飛に対しては、△4五桂と跳ねます。


先手の飛車が3筋にいれば、▲2二角成△同銀▲3二飛成があるので、桂馬を跳ねることができませんでした。

この場合は先手の飛車が3筋からそれたので、桂を跳ねて大捌きに出ることができます。

次に△8八角成▲同銀△7八飛成があるので、先手はまずこれを受ける必要があります。

ということで▲2二角成。後手も△同銀と取り返します。


この局面は、次に△5七桂成▲同玉△3五角という王手飛車があるので、先手はそれを受けることになります。
(△3五角に▲4六角と合わせても△2四角▲同角△5四飛。)

仕方なく▲4八銀や▲2五飛などと受けて、一局だと思います。

端攻めをする前に後手から動かれてしまったので、先手としては面白い展開とは言えないと思います。


端攻めをするには、
△2八飛と回らせないこと(▲2八歩と打たされて持ち歩を減らさない) と、
▲3四飛の位置に留まること(△4五桂と跳ねて開戦されない)
が条件となります。

ということで、両方を満たした手▲3八金を調べていきます。


△2六飛には▲2八銀と上がって歩を使わずに受かりますし、
先手の飛車も3筋にいるままなので△4五桂と跳ねてくることもありません。

▲3八金に後手は△6ニ玉。

そして待望の端攻めで▲1五歩と仕掛けます。
以下△同歩▲1二歩△同香▲1三歩△同香▲1四歩

ここから頑張って受けるなら△2三金ですが、▲8四飛と成りこみを見せながら逃げることができます。

手番を取って受けなければならない後手は、
△8三歩▲同飛成△8二歩
と龍を作らせても手番を握って受けますが、▲8五龍と引いた手が飛車に当たります。

後手もここで△2六飛が手番を取りながら逃げたようですが、角と金に当てながら▲1三歩成が入ります。

▲1三歩成を手抜いて△2九飛成なら▲2三とで金のほうを取ります。と金が角取りとして残っているので、これは先手良しとなります。


▲8五龍のときに△2六飛と逃げた手が先手になっていないということだったので、▲1四歩と打たれたときに先に△2六飛と逃げておく手を考えます。


さすがにここで手抜いて▲1三歩成と香車を取るのは△2九飛成と竜を作られます。

以下▲2二と△同銀と進んで、先手は角得ですが、△2六桂や△2六歩からのと金攻めが早いため、やや後手良しと言えそうです。


したがって、先に△2六飛と逃げておく手に対しては、手抜いて▲1三歩成が入りません。

先手はおとなしく▲2八銀として、いったんは受けることになります。

そこで△2三金と上がって飛車取りに当てつつ端を受けてきます。

先手も▲8四飛と回って、先手を取って飛車を逃げます。

後手は手番を取りながら受けなくては▲1三歩成が入ってしまうので、
△8三歩▲同飛成△8二歩。


▲8五龍と引き上げておくのも一局ですが、端攻めをしたからには貫いて
▲1三歩成△8三歩▲2二と と進めてどうでしょうか。


飛車を渡しても自陣に打ち込みの隙はありませんし、
最後の▲2ニとを金銀どちらで払っても▲2七香があります。

この変化は先手が駒得で指せると思います。


2017年7月29日土曜日

雁木戦法

相居飛車の将棋で、雁木戦法というものがあります。

今回はこの雁木戦法の紹介をしていきます。

雁木囲い

まず、雁木囲いというものがあって、下図のような囲いのことを言います。


6七と5七の地点に銀を配置して二枚銀の形を作り、金をひとつづつ上がって玉を1つ寄る囲いです。

相居飛車戦で使われる囲いで、二枚銀がしっかりしているので上部からの攻めに強いです。

矢倉戦で右四間飛車急戦を仕掛けられたときにも、この二枚銀を作り雁木を組んで受ける指し方が定跡となっています。

定跡にも現れるくらい、優秀な囲いと言えます。

反面、矢倉と違って▲7七銀型ではないため、8筋を守るのは左金1枚ですから、単純に棒銀で来られると受けにくいという弱点もあります。

囲いの特徴としては、角筋に自分の駒が配置されていないというのが最も大きいでしょう。

戦う時には▲6五歩と角道を開けます。
矢倉のように7七に銀がいないので、角を動かさなくても敵陣まで角の利きが届きます。

また、角を転換するときも▲7七角~▲5九角~▲2六角と3手で転換することができるのが強みです。角の通り道に自分の駒が置いてないからこその手得です。

矢倉の場合は▲7九角~▲6八角~▲5九角~▲2六角(▲7九角~▲4六角~▲3七角~▲2六角)と4手かけることになります。

とにかく素早く攻める将棋に向いた囲いです。


相居飛車戦での囲いなので、対振り飛車戦には向きません。

飛車を渡すとすぐに寄せられてしまう囲いです。

囲う手順

まず▲7六歩~▲6六歩として角道を閉じ、矢倉や振り飛車をにおわせます。
次に▲7八銀~▲6七銀として、矢倉にはしないことを意思表示し、振り飛車濃厚と見せます。
それから▲4八銀~▲5七銀と2枚目の銀を上げ、振り飛車でもなさそうに見せて相手を戸惑わせます。
そして▲7八金と上がって相手の飛車先に備え、▲6九玉と左に囲って居飛車で戦う姿勢を確定させます。
最後に▲5八金右と上がって囲いの完成です。

最初から雁木を目指して駒組をするなら、この手順が最も一般的です。

▲6七銀まで上がった時点で、相手は振り飛車に備えた駒組みをしてくることがほとんどです。

つまり舟囲いで2段目に玉を囲うため、上部からの攻めには弱い格好となります。

雁木は相居飛車の戦法で縦から攻めるため、相手を舟囲いに組ませるだけでもポイントを取ったことになります。


攻め方

居角型

雁木戦法は右四間飛車に構えて攻めるのが王道です。


攻めは飛車角銀桂の4枚を使って、一点集中で突破していきます。

手順としては▲4五歩と突き捨て、それから▲3七桂と跳ねていきます。

後から▲4六銀と応援を繰り出していくため、通常の腰掛銀に組む右四間飛車と比べると攻め足はやや遅めです。

その代わり、どこかで5筋の歩も突き捨てて戦線を広げるなど、非常に受けにくい攻めを仕掛けることができます。

角転換型

角を右に転換してから仕掛ける攻めもあります。


後手から△6四歩を先に突かれてしまって▲6五歩が突けない場合などは、角を右に転換して攻めることがあります。

この場合も攻め駒は飛車角銀桂の4枚で、非常に破壊力のある攻めとなります。

仕掛けの細かい手順はまた別記事として検討していきたいと思います。



その他の戦い方

二枚銀を使ってどんどん盛り上がっていく指し方もあります。


相手が角を転換してきたときに有効な指し方で、金銀を盛り上がっていって相手の大駒を押さえ込みます。

あわよくば入玉してしまおうという指し方になります。

プロが指さない理由

雁木戦法は優秀な戦法ですが、プロが指さないのには理由があります。

①攻めが単調
②囲いが薄い

この2点が大きな理由でしょう。

戦法として欠陥があるわけではありません。勝率が見込めないため雁木を進んで採用しないというだけです。

こういったマイナー戦法は、アマチュア同士の対局でも現れにくいです。

裏を返せば、滅多に指されない戦法だからこそ、対策を持っていない人が多いので、雁木を使えば意外と勝てるとも言えます。

矢倉早囲いを見せられた時にも、雁木に変化して急戦を仕掛けることができるなど、なかなか使い勝手のいい戦法だと思います。

2017年7月25日火曜日

銀交換後の方針

棒銀を指して、上手く銀交換ができた後の指し方について書いて行こうと思います。

定跡書なんかでは「攻めの銀と守りの銀を交換できれば棒銀成功」なんて書いてありますが、実際そのあと勝ち切るのは難しいです。

銀を交換したところで、そのあと何を狙いに指していけばいいのかさっぱり分かりません。

そんなわけで、自分で指した将棋をもとに、銀交換後の指し方を見てみようと思います。

銀交換した局面


序盤はこちらだけ飛車先の歩を切ることができた形になりました。

相掛かりで角交換した将棋というのか、角換わりというのかといった戦型ですが、右銀を繰り出していって、無事に相手の銀と交換するところまで上手くいった局面が下図です。

後手番での将棋だったので、△8二飛と引いたところです。

端攻め


ここから後手の方針としては、一例として
△9五歩 ▲同歩 △9七歩 ▲同香 △9八銀
といった攻めがあります。

これで8七地点の突破と桂取りの両狙いが決まって、棒銀側の成功です。

飛車先で交換した1歩と、交換した銀を持ち駒にしたからこそ実現した攻め筋です。

しかしこの攻め筋は、受ける側にも用意があり、
△9七歩と垂らしたときに▲8六銀と打ってしまう受けがあります。


この受けに対しては△9八銀と打ち込んでしまって、▲同香 △同歩成とと金を作って攻めていくことになります。
以下は、拾った香車を8筋に打って8筋から破っていく要領です。

しかしこれでは銀香交換で駒損の攻めになりますし、と金ができたくらいであまり迫力がないというのが個人的な感想です。

駒組み

端攻めが気に入らないとなれば、駒組みです。

棒銀側も攻めに手数をかけているので、まだ自陣の整備ができていません。
ある程度囲ってから本格的に戦いを起こそうと考えるのが自然でしょう。

ということで無難に駒組を進めていきます。



目指す形としては、このような囲いです。
平矢倉とか呼ばれるんですかね。

金銀3枚で格言通りですし、飛車を渡しても玉の横に金が2枚並んでいますから、強い戦いができます。

相手の駒組に隙が見当たらなければ、とりあえずこの形に向かって駒組を進めていきます。

余裕があれば△1二香から穴熊まで狙ってみてもよいですし、ここまでで囲いは十分だと思えば、△7四歩~△7三桂と駒を活用していって戦いを起こします。


▲5八金が浮いた瞬間

駒組を進めていくと、相手陣の右金が浮く瞬間が現れることがあります。
具体的には、玉を▲7九に引いた瞬間などでしょう。



この瞬間、△3九銀と引っ掛ける手が生じます。
序盤が棒銀でなかったとしても、角銀を手持ちにしていれば使える手筋です。



飛車取りなので、当然逃げます。

①▲2六飛

飛車を縦に逃げる手に対しては、△2八角と打って香車を拾いに行きます。
そして馬を作った後は飛車をいじめていきます。

②▲3八飛

銀取りに当てつつ飛車を逃げる手です。これには△4九角と打ちます。
銀を取れば金を取れますし、▲1八飛と逃げるなら△2七角成と馬を作っておいて十分です。

③▲1八飛

香車にヒモを付けつつ飛車を逃げる手ですが、単に△2七角と打っていきましょう。
飛車を取ってしまえば寄せるのは早いです。
以下▲1七飛と逃げるようなら△3六角成などと馬を作っておいて、棒銀側が十分指せます。


まとめ

銀を交換して手持ちにしておくだけで、受け手側は駒組みに制約がかかるのが大きそうです。

銀を捌いた勢いで攻め続けるのではなく、銀交換した後は一方的に固い囲いに組んで、それから戦いを起こすのが良さそうです。