2017年10月19日木曜日

角換わり桂跳ね急戦

久々に24で角換わりの桂跳ね急戦を指すことができました。

勝った将棋ですけど、対局中に悩んでた局面をボナンザと照らし合わせながら振り返って見てました。

その中で知った手筋をいくつかメモしておこうと思います。


今回の形

今回は、相手が△1四歩と突いていて、△7二銀と飛車の横利きを止めた状態のうちに開戦する形となりました。


△1四歩は▲1五角をあらかじめ消している意味があります。
△7二銀は▲3四飛と回ったときに金が浮いている点でやや不安な形かと思います。

後手が△6四歩と突いて腰掛銀を目指した局面ですが、ここで早速▲4五桂と跳ねて開戦しました。


この場合△4二玉や△5二金と上がっていないので、△2二銀と引くと▲5三桂成があります。

ということで、▲4五桂には△4二銀か△4四銀の二択です。

実戦では△4四銀と進んだので、こちらを見ていきます。

▲2四飛 △同歩 ▲同飛 △2三歩 ▲3四飛 △4二玉

最後の△4二玉と上がったところでは、△6三銀と飛車の横利きを通して受ける手もありそうですが、

その場合は▲4四飛と切ってしまって△同歩に▲5三桂成として攻めをつないでいくことになります。

この△4二玉と受けた局面、△1四歩がなければ▲1五角と打つ王手が非常に受けにくく、先手が攻めやすいです。

今回は▲1五角を打つことができないので、別の攻め筋を探す必要がありました。

実戦は▲4六歩と桂馬を支えたのですが、ここは▲2二歩や▲6六角も考えられるところでした。

それぞれ調べてみます。

①▲2二歩

▲2二歩は、▲2一歩成~▲3一角を狙った手です。

△3三桂と逃げられたときに構わず▲2一歩成とし△4五桂 ▲3一角と進めば狙い通りですが、
▲4六歩で桂馬を支えていない形では、△4五桂のところで△4五銀と銀の方で取られてしまい失敗します。

△3三桂には▲同桂成 △同銀 ▲同飛成 △同金(or△同玉) ▲2一歩成と進めて、先手が攻めをつなげられるかといった勝負になりそうです。

以下は▲3一角 △5二玉 ▲4五桂を狙っていくことになります。


また、▲2二歩と打ったところでは、単に△4五銀と桂馬を外される手もあります。

この手には▲3二飛成 △同玉 ▲2一歩成と進めます。



△2一玉とと金を払ってくれば、▲3三金や▲2四歩から玉頭に駒を残す方針で嫌味を付けていきます。

2一のと金が残る展開になるなら、▲2二角と打って攻めを続けます。


②▲6六角

この角は次に▲4四角 △同歩 ▲5三桂成 △同玉 ▲3二飛成の筋を狙ったものです。

後手としては、△5二金として5三地点に枚数を増やして受けるくらいでしょうか。

△6三銀として間接的に3二の金に飛車の横利きでヒモを付けておく受けもありそうですが、今度は▲4四飛と飛車の方を切って△同歩に▲4四角と飛び出す手が、1一と5三の両狙いとなります。

△5二金にも▲4四飛 △同歩 ▲4四角と飛び出して、香取りが受けにくいです。



単に▲4四飛と切るのではなく、▲2二歩 △同金の交換を入れてから▲4四飛を決行するのも、今度は▲4四角が金取りになっているのでより効果的だと思います。





2017年8月15日火曜日

角換わり先手棒銀 △1三歩の受け

先手番で角換わり棒銀を指しました。

作戦的にうまく行っても、そのあと勝ち切るのが非常に難しい戦法という印象が強いです。

上手く行っても勝ち切れないのでは、棒銀を覚えた意味がないので、銀を捌いた後の指し方を中心に調べていきます。


後手腰掛銀模様

手損のない角換わりの序盤です。

1筋を突き合っているのと、後手の△5二金を見て、棒銀で行くことを決めました。


△5二金と上がっているので、将来的に△5四角と打つ反撃含みの受け方をされた進行で、△2二飛と2筋を逆襲する筋が消えています。

数手進んで、相手は腰掛銀模様に構える姿勢を見せました。

棒銀に対して右玉で受ける指し方はあるのですが、後手番ですし、さすがに間に合いません。

後手からの早い攻めがないので、先手としてもすぐに仕掛ける必要はありません。

ということで、1手▲6八玉と溜めてから▲1五歩と開戦しました。


△1三歩の受け


▲1五歩 △同歩 ▲同香と進んだところで、△1三歩と受けられました。

△1三歩も十分ある手ですが、よく見るのは△1六歩です。

△1六歩は次に△1七歩成 ▲同桂 △1九角の反撃を見せた手です。

今回はとてもよく定跡整備のされた△1六歩の進行ではなく、定跡書でも解説がなおざりにされがちな△1三歩以降の進行を調べます。


有名な手順

この△1三歩に対しては、
▲1二歩 △2二銀 ▲1一歩成 △同銀 ▲8四香 △同飛 ▲6六角
として、飛車と銀の両取りがかかるというのが、棒銀の最も基本的な成功例としてよく紹介されている進行です。


しかしこの手順は、途中で(例えば▲1一歩成とされたところで)△8六歩の突き捨てを入れておいて、後手が8筋の歩を切っておくと、▲8四香と打たれたときに△8三歩と受けきられてしまうという裏手順も存在します。

ということで、先手としては▲6六角の両取りの進行ではなく、▲1九香と打ってとにかく1筋を突破するなど、別の攻めが求められます。


1筋突破の攻め

1筋突破の順を狙うにしても、▲1二歩と垂らしておく手は指しておいて損しません。

狙いは1三地点となるので、▲1一歩成 △同銀として1三地点の利きを1枚減らす役割があります。

▲1一歩 △2二銀に▲1九香と駒を足します。

後手はこれ以上1三に駒を足す手はないので(△3五角も▲3六歩で追われる)、△7四歩のような手を指したとしましょう。


ここから先手の攻めを開始します。

まず1三の利きを減らすべく▲1一歩成。

△同銀と応じた手に、▲1三香と走ります。

ここは▲1三香成として次に▲2三成香 △同金 ▲2四歩の攻めを狙ってもよいですし、▲1三香不成で銀取りとしてもよいです。

対して後手は△1三同桂と応じます。


ここは▲1四歩と打って、歩で桂馬を取りに行きたくなるところですが、それには△2五桂と逃げられてしまい、▲同飛には△2四香があるので桂馬を取り切ることができません。

ということで単に▲1三香成と取ります。

以下、△1二歩には▲2三成香 △2三金 ▲2四歩として2筋を突破できます。


△2二銀打の受け

上の▲2三成香から2筋突破を狙う順ですが、2四地点にもう1枚駒が利いていると受けられてしまいます。

▲1二歩と垂らした局面で、△2二銀と手持ちの銀を投入して受ければ、3三銀を残したまま受けることができます。


同様に進めていくと、まず1枚目の香車が走るときに▲1三香不成で行かなければ迫力がありません。

2枚目の香車が成った局面でも、次に▲2三成香と捨てる手がないです。

この場合は、▲1四成香と引いて、次に▲2四歩 △同歩 ▲同成香という攻めを狙っていくことになります。

この進行は後手の銀が1一で遊んでいることなどもあり、先手としても悪い展開ではないのですが、やはりここから勝ち切るのは相当難しいと思います。

ということで、△2二銀打の受けには別の攻め筋を考えます。


合駒がない瞬間

戻って、▲1一歩成に△2二銀とがっちり打って受けた局面です。

ここから▲1九香としてひたすら1筋をめがけていくのもよいですが、後手が銀を手放したこの瞬間、▲6六角という手があります。

次に▲8四香狙いで、これがどうにも受かりません。

銀を手持ちにしていれば、せめてもの△8三銀という受けはありました。

▲6六角以下は一例として、
△6五歩 ▲8四香 △6二飛 ▲3三角成 △同桂 ▲8一香成
といった進行が考えられます。

こうなれば、8筋に成香が残っていること、▲1一歩成 △同銀 ▲1三香成から▲2三成香と捨てる筋があること、などあって先手が指せるのではないかと思います。



2017年8月14日月曜日

相横歩取り▲7七角

相横歩取りです。

後手が△7六飛と横歩を取った局面です。


ここでは▲7七銀か▲7七桂か▲7七歩と言われてますが、▲7七角や▲8七銀という受け方もあります。

今回は▲7七角と打つ指し方について見ていきます。

 ▲7七角の狙い

△7六飛の局面では金取りだったので、角を打つ受け方も十分考えられます。

△7八飛成さえ受けてしまえば、先手には▲2二歩と▲8四飛の2つの狙いが残っています。

これは▲7七銀、▲7七桂、▲7七歩の時も同じで、▲7七銀や▲7七歩型の場合には後手は△7四飛とぶつけることで、▲2二歩と▲8四飛の両狙いを防ぎます。

今回の▲7七角型に対しても同じように△7四飛とぶつけると、▲同飛△同歩に▲1一角成とできるのが強みです。

ただ、この角は▲1一角成を見てはいますが、後手の飛車が7六にいるうちは角を動かすことができません。

ということで、後手から動きがなければ次に▲8七銀と飛車を追って、それから▲1一角成を実現させることになります。


▲7七角以下の進行

▲7七角に対して、後手の手は
①△5二玉
②△2二歩
③△2六飛
が考えられます。

ちなみに▲8七銀と上がらせないように△8六歩と打つのは、▲8四飛と回られたときに歩が打てなくて困ります。

では①~③を順に見ていきます。

①△5二玉

先手の角が動けないとみて、飛車を7六地点に置いておく指しかたです。

この手に対して▲8七銀と飛車を追ってから▲1一角成を狙うのは、△2六飛と回られて失敗します。

この△5二玉には単に▲2二歩と打ってしまうのが良いです。

▲2二歩以下、
△3三桂 ▲2一歩成 △4二銀 ▲1一と
と香得しておいて、先手が指しやすいと思います。

②△2二歩

この手は▲2二歩と打たれる手を消しています。

また、▲8七銀~▲1一角成の筋も先受けしています。

△2二歩以下は、
▲8四飛 △8二歩 ▲5八玉(△7五角の受け) △2六飛 ▲2八歩
と進めておいて、穏やかな将棋になります。


③△2六飛

先手が角を手放して王手飛車の筋が無くなったので、飛車を回る手も考えられます。


先手は▲2八歩と受ける1手ですが、▲1一角成と▲8四飛の両狙いが残っています。

▲2八歩以下は、
△3三歩 ▲8四飛 △8二歩 ▲5八玉
と進み、これも穏やかな展開となります。





こうしてみてみると、▲7七角と打つのも先手としては十分やれると思います。

相横歩取り対策に自信がない時は、この▲7七角で1局の将棋にしてしまうほうが無難かもしれません。




2017年8月12日土曜日

角換わり桂跳ね急戦

24で角換わりの将棋を指しました。

勝った将棋なのですが、気になるところがいくつか残ったので、検討していこうと思います。

自分が後手番でした。

桂跳ね急戦

角換わりで今流行っているらしいのが、4五桂急戦です。


先手が▲3七桂と跳ねてきて、おそらく急戦を考えていたのだと思います。

後手番として受けるなら△4四歩と突いておいて、桂を跳ねさせないようにしておくところだったのでしょう。

ただ先手陣も5七地点が手薄なので、こちらも桂馬を跳ねて攻めあう形にしてもやれるんじゃないかと見て、△7三桂と跳ねました。

この局面で先手が単に▲4五桂と跳ねて仕掛けるとどうなるのか、調べていこうと思います。


①▲4五桂に△2二銀

▲4五桂と跳ねてくる手に対して銀を逃げるなら、△2二銀と△4四銀があります。

△2ニ銀と引く手から見ていきます。

これはのちに△4四歩と突いて、歩で桂馬を取り切ってしまおうという手になります。

▲4五桂 △2二銀以下は、▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △4四歩と進みます。


桂馬を取り切られてしまっては、先手は悪くなってしまうので、ここでどうにか手を作っていく必要があります。

△4四歩に対しては▲5五角。


△4五歩と桂馬を取れば▲2二角成から攻め込むことができるので、この▲5五角打によって間接的に桂取りを受けていることになります。

この筋で桂取りを受けるだけなら▲6六角のほうが安定していて良さそうですが、▲6六角だと後手に△6五桂と攻めあう選択肢を与えることにもなります。

後手の桂馬の活用を押さえる意味でも、5五から打つのが良いみたいです。


角打ちに後手は△2三歩と打ちます。

飛車を引けば、次こそ△4五歩で桂馬を取り切ることができます。

そこで先手は▲3四飛とゆるまず攻めを続けます。

後手は△4五歩と、当初の狙い通り歩で桂馬を取り切ります。


先手はじっと▲4五同歩。

ここ▲4五同歩ではなく、▲2二角成 △同金 ▲3一銀という順も見えますが、△4三玉と上がる手が飛車に当たってきて、意外とうまく行きません。

そこで、じっと▲4五同歩としておきます。

この▲4五歩を指しておくことで、▲2二角成 △同金 ▲3一銀の順で△4三玉と上がられた時に、▲4四飛とさらに迫ることができます。

▲4五同歩は一見ただ1歩拾うだけのような手ですが、この▲4四飛をするための土台となる歩でもあります。

▲4五歩に対しては、次に▲2二角成があるので、それを受けて△3三銀や△3三桂などと指すことになります。


後手は桂得しましたが、歩切れです。

形勢はほぼ互角と言えそうです。


②▲4五桂に△4四銀

▲4五桂に△4四銀と逃げた場合も、
▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △2三歩 ▲3四飛と進みます。


例えば後手が△6四歩のようなぬるい手を指すと、先手から▲2二歩という攻めがあります。

▲2二歩に△同金は▲3一角なので△3三桂と逃げますが、▲2一歩成と成っておきます。


△4五桂として桂を外すなら▲3一角がありますし、何もしなければ▲2二角と打ち込むような手で先手の攻めが続きます。


ということで戻って、▲3二飛の局面で後手の手を考えます。


△2八角と打つのは▲3七角と合わされ、△同角成 ▲同銀に△4七角と打つことはできます。

しかし△4七角から馬を作るくらいの手ではぬるいようで、▲2二歩からの攻めが飛んできます。


▲3四飛に対して△2五角と打って飛車を取りに行くてもあります。

△2五角には、
A. ▲3二飛成 △同金 ▲2六金と飛車を切って角を取りに行ってもいいですし、
B. ▲3五歩 と歩で支えておいても先手が指せます。


ということで、やはり▲4五桂と跳ねていく仕掛けは、一気に決まるとまでは行かなくても、十分有力のようでした。


桂跳ね急戦 その2

先手が急戦を見送って▲4七銀と上がったところです。


ここから△6五桂と跳ねる仕掛けが通用するか見ていきます。

①△6五桂に▲6六銀

銀を上に上がってきた場合は、△6四歩と下から歩で支えておいて後手十分です。


この位置で桂馬が安定すれば、後手としても不満はありません。


②△6五桂に▲6八銀

銀を下に引いてかわす手です。


のちに▲6六歩として、歩で桂馬を取り切ってしまおうという狙いがあります。

後手としては緩い手を指していると桂馬を取り切られてしまうので、ここで動いて行かなければなりません。

△8六歩 ▲同歩 △同飛 ▲8七歩 △7六飛と進みます。


先手は歩切れで、この金取りを受けなければなりません。

▲6九玉と寄って金にヒモを付けてくる受けなら、△4四角と香取りに打つ手が非常に受けにくいです。


▲7七桂と受ける手にも△4四角と足していって、7七地点に集中させます。


どうやら△6五桂と跳ねていく後手の仕掛けは成立しているようでした。


△6五歩▲同歩△同桂の仕掛け


先手が▲4八金と上がって▲2九飛と引く前の、この中途半端な瞬間に仕掛けていく手が成立しないか調べました。

△6五歩 ▲同歩 △同桂と仕掛けていきます。


ここも銀の逃げ方は▲6六銀と▲8八銀があります。

順に見ていきます。

①▲6六銀

銀を上に上がってくる手には、△8六歩 ▲同歩 △同飛 ▲8七歩 △7六飛と横歩を取りに行きます。


▲6五銀と桂を取り切ってくる手には△6六飛で銀を取り返す手があります。

そこで▲6七歩と銀を支えて、次に桂を取る手を見せます。

▲6七歩と受けられても、△5九角と打って後手の攻めは続きます。


▲同玉は△7八飛成が決まってしまうので、金にヒモを付けながら逃げる▲6九玉か▲7九玉しかありません。

以下は△6六飛と切ってしまいます。

▲同歩に△3九銀と絡んでいっても後手の駒得ですし、△4八角成 ▲同飛 △5七桂成でも後手が十分な形勢です。


②▲8八銀

▲8八銀と引かれる手に対しても、△8六歩 ▲同歩 △同飛と行きます。


ここで先手が▲6六歩と打って、桂を取りに行けるのが▲8八銀の強みです。

ちなみに、この▲6六歩を嫌って、▲8八銀の時に後手から△6六歩と打っておく手もありそうに見えます。

しかしこれには▲7三角~▲5五角成と馬を作られ、この歩も払われてしまうことになるので、上手く行きません。

ということで△8六歩から飛車先の歩を切って、先手が▲6六歩と打った局面で後手がどうするかです。

△4四角と打つ手が、桂取りの受けになってます。

上にも書いたのと同じで、桂を取ると▲8八角成があります。

そこで二枚換えの順を受けて▲8七歩と打ち、△7六飛と横歩を取ります。


ここで先手が桂馬を取ると、△8八角成 ▲同金のときに△6七歩という王手があります。

6筋の歩が切れていると生じる筋で、その進行は後手勝勢です。

というわけなので桂を取り切ることはできず、△7三角から馬を作るような展開になりますが、いずれにしても後手の攻めが続く形となります。


2017年8月6日日曜日

玉頭位取り戦法

玉頭位取り戦法の紹介をしていきます。


玉頭位取り戦法とは

今では目にすることもほぼ無いような戦法ですが、昭和のころはよく指されていたそうです。

どういう戦法かというと、相手の美濃囲いに対して銀立ち矢倉を組み、玉頭から攻めていくことを目指した戦法です。

居飛車の囲いは下図のような構えになります。


▲7五歩と位を取って、矢倉囲いの銀が1マス上がったこの囲いを銀立ち矢倉と呼びます。

基本的に、対振り飛車戦で居飛車側が採用する戦法となります。

美濃囲いは横からの攻めにはとても強いですが、上部からの攻めにはそこまで強くありません。

そこで、飛車を成りこみあって横からの戦いにするのではなく、玉頭から直接攻めてしまおうという趣旨の戦法が玉頭位取り戦法です。


攻め方

玉頭位取り戦法を採用した時の攻め筋を、いくつか見ていこうと思います。

コビン攻め

玉頭位取りを指さなくても、美濃囲いに対してよく見かける攻め筋ですが、角のラインを活かしたコビン攻めがあります。


玉頭位取り戦法では、序盤のうちに元々▲7五歩とすでに位を取ってます。

そのため、桂馬を拾わなくても▲7四歩と、たった1手ですぐに相手陣につっかけることができます。

角のラインさえ安定すれば、▲7三歩成から再度▲7四歩と打って、執拗に7三地点を攻めることができます。

また一段目に龍を成っておけば、△7三銀とこの銀が動いた瞬間に6一の金をボロッと取ることができます。

普通の対抗形の将棋のように横からの攻めだけではなく、縦のからの攻めを組み合わせることができるので、非常に強烈な攻めとなります。


と金攻め

序盤で位を取っておくということは、歩をすぐに突き捨てられるということです。

下図のように7筋だけでなく6筋の位も取っておくことで、▲6五歩△同歩▲6四歩といったような、歩を使った安上がりな攻めをすることができます。


歩で攻め込むことができるので、相手に高い駒を渡すこともありませんし、反撃の心配がありません。

攻めるときにその筋に歩が利くというのは非常に大きいです。


垂れ歩

こちらも歩を使った攻めです。


▲8五歩△同歩▲8四歩として玉頭に拠点を作ってしまいます。

銀や香車を拾うだけで、8三に打ち込んで攻め込むことができます。

玉の横に金銀をたくさん並べた美濃囲いですが、上部からの攻めに備えているのは7ニの銀しかいません。

5筋6筋に配置された金駒の守備を無力化することができる攻めです。


受けの手筋

基本的に矢倉系の囲いというのは、横からの攻めに対して耐久力がありません。

玉頭位取り戦法で使われる銀立ち矢倉も一緒です。

ただ普通の矢倉と違って、玉頭位取り戦法ならではの受け方というのも存在します。


底歩

中盤で6筋の歩を突き捨てておく展開となることも多く、終盤で横から飛車を打たれたときに6筋に歩が利くのがとても心強いです。


守りに歩を打ってしまうと、6筋に歩を打つ攻めはできなくなりますが、この底歩1枚入るだけで相手の攻めをかなり遅らせることができます。


また、底歩ではなくても、自陣に歩を打つ受けというのは非常に相手からするといやなものです。


矢倉は玉の横に金1枚しか置いてないため、△6九銀などと打たれてこの金に手を付けられてしまうと、ほぼ粘りが利きません。

それを、この▲6八歩のような1手だけで見違えるように固くすることができます。

すぐに6筋の歩を突き捨てられる戦法だからこそできる受け方です。


玉が広い

とにかく上部が広いです。


7筋8筋の空中は序盤のうちに自分の領土としてますから、相手としては横から攻めていっても、詰ましきるのに意外と手こずります。


戦法の特徴

ほかにも玉頭位取り戦法の特徴があるので、思いつくだけ書き出してみます。

良いところ

直接相手玉に攻め込んでいけるので、思ったより攻めが早いです。
横から攻めるのと比べて、5筋6筋の金銀が守りに利いてきにくいため、すぐに王手のかかる格好を作ることができます。

居飛車からの玉頭攻めが意外と早いので、中盤で先に飛車を成りこまれて攻められているようでも、歩をつっかけて玉頭戦が始まってしまえば、すぐに紛れます。
見た目以上に形勢が良いことも多く、銀立ち矢倉を組んだ時点で実は模様勝ちしていることが多いです。

そして、あまり見かけることのない戦法なので、対策している振り飛車党が少ないです。
対策を知られていないということは、自分の狙い通りの形が実現しやすいということでもあり、アマ同士の対局では大きなアドバンテージでしょう。

ほかにも、早々に▲7五歩と位を取ってしまうので、振り飛車側の右桂の活用を押さえることができます。
高美濃~銀冠への囲いの進展も許さないため、振り飛車側を手詰まりにさせやすい戦法です。
囲いの進展性がなければ、振り飛車のほうとしても仕掛けていくしかありません。
角道を止めるタイプの振り飛車は、基本的に居飛車に攻めてもらってカウンターで捌く戦法ですから、自分から開戦するのには向いてないわけです。
手詰まりになりたくなければ無理に仕掛けていくしかないので、中途半端な体制から動いた結果、受けきられてしまうということが起きます。


悪いところ

組上がるまでに手数がかかるので、早めに開戦されるとピンチです。
とにかく相手の攻めを遅らせる技術が必要になります。

駒が上ずって隙が生じやすいので、角交換しただけでも気を使います。

隙ができると一瞬で崩れる陣形なので、早指しにはやや不向きなところがあります。



まとめ

ここまで玉頭位取り戦法の紹介をしてきました。

個人的には魅力が詰まっている戦法だと感じています。

特に玉頭戦でごちゃごちゃした展開というのは読む分量も増えますから、将棋の上達という面では非常に指す意味のある戦法なのではないかと思っています。

また玉頭戦は縦の戦いですから、歩を使った手筋や桂香を使う攻め方など、棋譜を見直すだけでも多くのことを学べるのではないかと思います。

しかし、やはり玉が固い囲いが好まれるのが今時の将棋です。
勝率重視で行くなら、玉頭位取り戦法のような薄い囲いではなく、左美濃や穴熊といった固い囲いで戦うのが良いのでしょう。